モロヘイヤは「シマツナソ」というアオイ科の植物です。
他にもタイワンツナソなど別名がいくつかあります。
北アフリカ原産の植物で、食用や繊維原料に用いられます。
日本に流通し始めたのは、1980年ごろからで宮城県大郷町などが有名な産地です。
収穫期は7月から10月で家庭菜園でも扱いやすいお野菜です。
可食部は刻んだり茹でたりすると特有の粘りが出てきます。
カルシウム、カロテン、ビタミンB、ビタミンC、食物繊維などが豊富な緑黄色野菜です。
抗酸化作用のあるクエルセチンも多く含むため、栄養価が極めて高く「野菜の王様」の異名を持つそうです。
お浸しや、スープ、天ぷらなどで多く食されているモロヘイヤですが、毒性のある植物です。
ではどこに毒があるのでしょう?
〜本日の内容です〜
モロヘイヤに毒?毒のある部位はどこ?
モロヘイヤの種子にはストロファンチジンという強心作用のある配糖体が含まれていて、これが毒性とされるものです。
近年の研究でこの物質は茎にも含まれることがわかりました。
ストロファンチジンは、人体に入るとめまい、動悸、吐き気、最悪の場合は心不全などを引き起こすこともあるといわれています。
また種子を守る莢(さや)や、発芽からまもない若葉にもストロファンチジンが含まれています。
なので毒性の持つ不可食部をまとめると、「種子」「実」(莢や種子を含むため)「茎」「発芽してから収穫期に入るまでの若葉」となります。
基本的にスーパーで流通しているモロヘイヤは若葉の部分ですが、収穫期を迎えたものなので毒性はありません。
また加工食品などからも検出はされていませんので安心です。
毒性に気をつけるケースは家庭菜園をする場合です。
モロヘイヤの毒がある若葉の見分け方は?
家庭菜園しやすいとされているモロヘイヤですが、収穫期でないと毒性を持つ部位が多いので見分ける知識が必要です。
まず小さなお子様がいる場合や、ペットを飼っている場合は育てる前の、種の誤飲に注意です。
種子なので毒性があり大変危険です。
さて上記で説明した毒性がある「発芽してから収穫期に入るまでの若葉」はどのように見分けることができるのでしょうか。
まず寒さに弱いモロヘイヤは春先から種や苗を植えることができます。
収穫は草丈が50cm~60cmまで成長したころ可能になります。
そこまで成長したら、若葉の先端約10cm~20cmの部分を摘み取って収穫していきます。
手で簡単に折ることができる状態が一番おいしい時期とされています。
収穫できなくなる合図としては、花が開花した時です。
開花してからは茎にも毒性が集まり出し、莢が付き始めます。
食べるのをやめましょう。
毒性があるかないかの見分け方は、草丈の育ち具合となります。
50cmほど育つまでには種まきから、約4か月と言われていますので目安にしてください。
モロヘイヤの毒性の致死量は?
モロヘイヤの種子の致死量は、ブタでは0.5g/kg(種子)となっています。
マウスによる毒性実験も0.5g/kgで半数致死量の結果が出ています。
個体の大きさには関係なく摂取量に線引きがあるようです。
モロヘイヤの一莢には種子が 約200個(0.7g)入っているとされているので、一莢で致死量を上回る種子の量ということです。
非常に危険な植物であるとわかります。ストロファンチジンは加熱ともあまり結びついておらず、可食部を加熱処理するのはあく抜きのためです。
不可食部を見極め食べない方法しか毒を回避する方法はないかと思います。
モロヘイヤの毒による症状は?死亡例はある?
ではストロファンチジンの毒性による症状はどのようなものが見られるのでしょう。
暑さに強いモロヘイヤは昔からエジプトやアフリカで栽培されてきました。
そのなかでストロファンチジンはアフリカの先住民が毒矢として利用していたほど強力な毒性を持っています。
一般的にストロファンチジンを体内に入れてしまうと食中毒の症状が見られます。
嘔吐や下痢、起立不能、食欲不振などです。
このような場合は、水分補給をしながら毒素が体外に出るようにし、早く医療機関の診療を受けましょう。
現在、人の死亡例は世界中でまだ確認されていません。
しかし日本でも牛による死亡例が1件あります。
平成9年10月に長崎県の農家にて、モロヘイヤの実のついた枝を牛5頭に食べさせたところ、そのうちの3頭が中毒死したという事例です。
その事例での検査では、心臓部での鬱血と出血が見られ、血液成分の数値が上がり、腎機能の低下、脱水症状などが見られました。
世界では豚による死亡例も確認されていますが、ストロファンチジンの毒性の感受性は動物種にかなりの差があり、鶏での投与実験では何の症状も見られませんでした。
モロヘイヤを使った簡単レシピ
毒性がありつつも家庭菜園がしやすいとされるモロヘイヤですから、きちんと育てて美味しくいただきたいものです。
もちろんスーパーで買ってもよし。
簡単な調理法を紹介します。
モロヘイヤの下茹で
ビタミンが多いモロヘイヤはさっと下茹でし、栄養素が溶け出しすぎないようにしましょう。
茎を取り除いたモロヘイヤを、塩を少々加えたたっぷりの湯に入れます。
数秒して色が鮮やかになったら、すぐにザルにあげて水にさらします。
だいたい40秒~1分です。
和え物
モロヘイヤの旬は7月~10月ですのでさっぱり頂くのに適しています。
下茹でしたモロヘイヤは3cm~4cm幅に刻んで、オクラやみょうが、梅肉などと混ぜましょう。
味付けはめんつゆや、ポン酢が相性いいです。
お好みなお味でどうぞ。
そのまま食べても、冷奴やご飯にのせるのもありですね。
汁物
モロヘイヤを細かく刻んで作りましょう。
味噌汁や溶き卵と混ぜて中華風スープに。もしくはトマトを使って冷製スープにも使えます。
和風だしにも洋風コンソメにも合います。
冷やしうどん
ねばねば食材は相性ばっちりの冷やしうどん。
刻んだモロヘイヤと、納豆やなめこ、とろろなど混ぜ合わせてうどんへ。
卵黄や大葉、刻みのりをトッピングしてはいかがでしょうか?
もちろん蕎麦、そうめんでも代用できます。
炒め物
癖がないモロヘイヤはお肉との相性もいいです。
豚肉とオイスターソースで炒めたり、鶏肉と照り焼きにしたりおかずにちょうどいいです。
さいごに
栄養満点なモロヘイヤには思わぬ危険があったことに驚きました。
しかし市販のモロヘイヤをはじめ、家庭菜園も手順や見分け方を知り安心できました。
ただペットを飼っている方、小さいお子様がいる方は安全管理に十分気を付けていただきたいと思いました。